AIを仕事に生かすなら、まず「自分しか知らない情報」を残しておく

AIに文章を書いてもらったり、仕事の相談をしたりしても、「間違ってはいないけれど、ちょっと違う」と感じることはありませんか?
どこかで見たような文章になったり、こちらの事情に合わない提案が出てきたり。
そんなとき、頼み方を工夫する前に確認してほしいことがあります。
「AIは知らないけれど、自分は知っている情報」を渡せているでしょうか。
お客さんが何に困っているのか。
これまで、どんな話をしてきたのか。
現場では、どういう進め方をしているのか。
自分は何を大事にして判断しているのか。
こうした情報があると、AIは自分の仕事に合った答えを出しやすくなります。
今回は、その材料を残して、仕事や発信に使うまでの流れをお伝えします。
AIが知らない情報は、普段の会話にある

たとえば、ホームページに載せる文章をAIに頼むとします。
「うちのサービスの紹介文を書いて」
これだけでは、AIには判断の材料がほとんどありません。
一方で、こんな情報があればどうでしょう。
「初めて相談する方が多く、料金がどこまで含まれるのかをよく聞かれます。打ち合わせでは、できることだけでなく、対応できないことも先に説明しています」
どんなお客さんがいて、何を不安に感じていて、こちらがどう対応しているのかが見えてきます。
こうした背景の情報を「コンテキスト」と呼びます。ただ、言葉を覚えるよりも、「AIが知らない、自分の仕事の事情」と考える方が分かりやすいと思います。
そして、その情報がたくさん含まれているのが、日々の打ち合わせや会話です。
普段は当たり前に話していることでも、書き残さなければ、あとからAIに渡すことはできません。
まずは、会話を残すところから

情報を残す方法として、始めやすいのが録音です。
話しながら「ここをメモしなきゃ」と考え続けるのは、意外と大変です。録音があれば、あとから内容を確認する手段を持てます。
相手の了承を得たうえで、まずはスマホの録音機能など、手元にあるもので始めてみてください。
最初から専用の道具や、立派な仕組みをそろえる必要はありません。
録音して、文字にして、ひとつ使ってみる。その流れを経験してから、自分に必要な道具を考えれば十分です。
会話の録音だけでなく、自分が考えたことを音声で残すのも一つの方法です。
打ち合わせのあとに、
「今日、お客さんからこんな質問をされた」
「この説明だと伝わりにくかった」
「次は、こういう順番で話してみたい」
と、短く話しておく。
きれいな文章にする必要はありません。その場で感じたことが残っていれば、あとから整理する材料になります。
文字起こしは「決定・やること・未確認」に分ける

録音を文字にしたものの、長くて読み返せない。これでは、せっかく残した情報を使いにくいままです。
そこで、最初にAIへ頼んでみてほしいのが、次の整理です。
この打ち合わせの記録を、「決まったこと」「やること」「まだ決まっていないこと・確認が必要なこと」に分けてください。
担当者や期限は、記録にある場合だけ書いてください。不明な点は補わず、「要確認」としてください。
たとえば、ホームページの打ち合わせなら、
- トップページの写真を差し替えることは決まった
- 写真の候補を用意する必要がある
- 原稿を誰が書くかは、まだ決まっていない
というように整理できます。
「話したこと」と「決まったこと」は、同じではありません。
この区別ができると、次に何をするかが見えます。決まっていないことは、次回の打ち合わせで確認する議題になります。
ただし、AIの整理にも取り違えはあります。担当者や期限、金額など、大事なところは元の記録に戻って確認してください。
読みやすく整理したものと、元の記録を両方残しておく。これが、あとから使うときにも役立ちます。
ブログやお知らせのネタも、すでに手元にある

ホームページやブログを更新しようとして、「何を書けばいいんだろう」と止まってしまうことはありませんか?
そのときも、過去の会話を見てみてください。
お客さんに説明したこと。
初めて聞かれた質問。
何度も聞かれる質問。
仕事を進める中で気づいたこと。
こうした内容は、記事やお知らせの材料になります。
AIにゼロからテーマを考えてもらう前に、自分の記録から探してもらう方法です。
この記録から、お客様に役立つブログのテーマを3つ挙げてください。
それぞれ「どんな疑問に答える記事か」と「記録のどの内容を使えるか」を示してください。記録にない事例や成果は追加しないでください。
候補を見て、「これは別のお客さんにもよく説明しているな」と思うものから選べば、書き始めやすくなります。
一つの記録から、ブログだけでなく、SNS投稿や活動報告、メールの説明文を作ることもできます。
その際は、誰に、何を伝えるための文章なのかを添えてください。同じ材料でも、使う場所や目的によって、必要な説明は変わります。
なお、お客さんとの会話をそのまま公開するわけではありません。AIに渡す前に個人情報や機密情報を除き、記事にしたあとも、公開してよい内容かを確認しましょう。
「名前を消して」とAIに頼むだけで、確認が済むわけではありません。
お客さんの質問は、ホームページの改善にも使える

会話の記録は、記事のネタになるだけではありません。
今のホームページに足りない情報を見つける材料にもなります。
たとえば、
「全部でいくらかかりますか?」
「初めてでも大丈夫ですか?」
「事前に何を準備すればいいですか?」
こうした質問に、普段は口頭で答えていても、ホームページには書いていないことがあるかもしれません。
文字起こしを使って、AIにこう頼んでみてください。
この会話から、お客様の質問や不安を抜き出してください。
ホームページの「よくある質問」に使えるよう、質問と回答を整理してください。
回答は会話の内容だけを使い、不明な点は「要確認」としてください。
まずは、質問を3つ拾うだけでも十分です。
そして、その答えが今のホームページに載っているかを確認してみます。
載っていなければ、追加する候補になります。載っていても、見つけにくかったり、説明が分かりにくかったりする可能性があります。
お客さんの言葉から見直すと、「こちらが伝えたいこと」に加えて、「お客さんが知りたいこと」を載せやすくなります。
細かく作り込むより、小さく使ってみる

ここまで読むと、録音、文字起こし、保存、AIでの整理と、いろいろ準備が必要に感じるかもしれません。
でも、最初から全部を整える必要はありません。
次の打ち合わせを、了承を得て録音する。
文字起こしから、次にやることを一つ取り出す。
よく聞かれた質問を一つ、ホームページの原稿にする。
まずは、そのくらいからで大丈夫です。
うまくいったら、使った依頼文も残しておきます。うまくいかなければ、「何が足りなかったか」「どう直したか」を短く残します。
それも、自分の仕事に合うAIの使い方を育てる材料になります。
AIに仕事を頼むときに役立つのは、特別な言い回しだけではありません。
自分が経験したこと、お客さんと話したこと、自分が判断した理由。
その材料を少しずつ残して、必要なときに渡せるようにする。
次の打ち合わせで出た質問を、一つ残すところから始めてみてください。



